浦和地方裁判所 昭和54年(ワ)128号 判決
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【判旨】
1 シーエス精器と被告間の取引の内容について、
<証拠>によれば、被告は、シーエス精器から商品を仕入れる以前から、高島屋が雑誌やテレビ等の宣伝、広告によつて行つていた全国的な家庭電気製品等の通信販売に用いる商品を高島屋へ納入していたところ、昭和五二年五月ごろ、シーエス精器から同会社が製造しているふとん乾燥機等を高島屋の通信販売網を使つて販売することの依頼を受けたので、予めシーエス精器の製品の製造設備や品質を検討のうえ、同年六月二〇日シーエス精器の製造したもちつき機(CSM10S)一五〇〇台、同(CSM15S)二〇〇〇台を買い受ける契約を締結するとともに、同日付をもつてシーエス精器の用意した取引約定書(乙第二二号の一、二)に調印したこと、同約定書には代金の支払方法について、シーエス精器は、毎月二〇日締切りで納品代金を被告に請求し、被告はその代金を同月末日までにシーエス精器に支払うものとする旨の記載があるほか、被告に営業状況その他所要事項の報告、提供を求めることができることや被告のシーエス精器に対する現在及び将来負担する債務を担保するため保証金又は動産もしくは不動産の提供を被告に求めることができること等の約定が記載され、被告代表者の梅本義美は、被告会社のシーエス精器に対する右債務につき個人として連帯保証していること、被告は、その後シーエス精器が倒産する直前の昭和五三年二月下旬ころまで、被告からもちつき機、ふとん乾燥機、食器乾燥機等を仕入れ、それら商品の中から不良品が出て、消費者や高島屋から返品された場合には、その不良品につき、仕入価格をその時々のシーエス精器に対する買掛残債務から適宜控除していたことが認められ、右認定に反する<証拠>は、前記各証拠に照らして採用できないし、他に右認定を覆えすに足る証拠はない。右認定事実によれば、シーエス精器と被告間の取引は、前記取引約定書に基づく、シーエス精器の製造する家庭電気製品についての継続的な売買取引であり、従つて、その取引期間中に発生した不良品の返品等による売買代金の清算も、個々の具体的取引ごとに行われるのではなく、その時々に存在する被告のシーエス精器に対する買掛金残債務から不良品の価格を控除するという方法によつて決済される定めであつたのであるから、原告がシーエス精器から譲り受けた売掛金債権は、かような取引の結果残存していた昭和五三年三月三〇日現在の売掛金債権であつたものと解するのが相当である。
従つて、原告がシーエス精器から譲り受けた売掛金債権が特定の売買契約上の代金であるとの原告の主張は採用の限りでない。なお、証人樽沼仲三郎、同古屋次男、同細川吉衛の各証言によれば、被告がシーエス精器から商品を買い受ける際には右契約書のほかに個別的契約書を締結していたことが認められるが、かかる事実が存するからといつて前記認定を左右するものではない。
2 不良品による損害について
(一) <証拠>によれば、
(1) シーエス精器は、同会社が製造し被告に納入した商品には、一般消費者が買つたときから一年以内に自然発生した故障についてはすべて無償で修理するので当該商品に瑕疵があつた場合には、それを買つた店又はシーエス精器に持参するようにという内容の一般消費者を対象とする品質保証責任を明記した保証書を添付していた。もつとも、シーエス精器が倒産した後に被害が高島屋へ納品した商品の一部には、当該商品が倒産会社の商品であるというイメージダウンを避けるため発売元を被告会社とし、被告が右品質保証責任を負う旨記載した保証書を被告自らが作成して添付したものもあつた。
(2) ところが、シーエス精器が被告に納入した商品は前示1のとおり高島屋の通信販売網によつて販売されることが前提とされ、その販路もほぼ全国に及んでいたのにかかわらず、シーエス精器はそれに対応できる人的物的なアフターサービス体制を整えていなかつたばかりか補修等に必要な部品を予め被告や高島屋に供給しておく等の措置を講じてもいなかつたことから、一般消費者より直接シーエス精器に申出があるような場合は別として、高島屋に対して不良品であるとの申出があると、高島屋がこれを預つて被告に返品し、被告がシーエス精器に返品するという体制をとつていたので、シーエス精器も被告に対し、不良品であるとの申出を受けたときには、別の新しい製品を一般消費者に渡すことを昭和五二年六月二〇日の前記契約締結時から了承していた。
(3) そこで被告は、高島屋から不良品の返品があると、それらの商品がある程度の数量になつた段階でそれらをシーエス精器に引き渡していた。そして、シーエス精器が倒産した後は、同会社の生産は中止され、在庫商品も債権者らに差押えられたため、同会社が保証責任を履行することはできなくなつたので、被告自身がその保有している別の新しい商品を引渡したり、本件商品やその他の返品された不良品の中から部品を取り外して補修を行つたりしてシーエス精器の約束した保証責任を履行していた。
以上の事実が認められ、これを左右するに足る証拠はない。右認定事実に前示1のシーエス精器と被告間の取引の内容を合せ考慮すると、シーエス精器は、同会社の製造する右商品についてはいずれも一般消費者に対し、買つた時から一年間の品質保証責任を負う旨約していた関係上、それを履行する方法として被告がシーエス精器に代わつて別の新しい商品を高島屋へ引き渡すことによりその履行をすることに関し、シーエス精器と被告間に合意が成立していたものと解される。そうすると、被告の買い受けたシーエス精器製造の商品は、同会社の品質保証責任が付加されたものとして売買されたものであるというべきであるから、シーエス精器が右保証責任を履行しないために被告自身がそれを履行した場合には、被告は、そのために要した資用をシーエス精器との間の合意に基づき当然に同会社に請求できるものといわなければならない。
もつとも、シーエス精器と被告は、いずれも商人であるから、シーエス精器が被告に売り渡した商品については、商法五二六条の適用をみるべきところ、<証拠>によれば、シーエス精器が被告に売り渡した商品は、シーエス精器の工場から高島屋の倉庫に直接納入することとされ、その納入には被告が立会うものの数量の確認程度しかせず、抜き取り検査等の方法による製品の品質の検査等はしていなかつたことが認められ、この事実に前記認定の事実を総合考慮すると、シーエス精器・被告は、その間の取引においては、商法五二六条の規定の適用を排除して右合意を成立させたものと解するのが相当である。
(高山農 野田武明 友田和昭)